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謎解きはディナーの中で~『リストランテ薫』

2月25日(月)、念願だった江別創作イタリア料理『リストランテ薫』のディナーに初めて訪れた。初めてランチに伺ったのが、昨年の3月11日だから、ほぼ1年ぶり。この日もお付き合い願いましたのは伊藤聖子さま

ランチの時の太陽が燦々と降り注ぐ開放的な雰囲気とは一転。夜はシックなイメージ。テーブルセッティングは黒、赤、金の漆器で統一され、ほとんど素っ気ない位装飾を排除した空間は、まるで茶室を思わせる。よく見ると玄関や和室の床の間には、大事に使われてきたと思われるひな人形が飾られている。シェフの私物なのだろうか?室内には只ならぬ個性が漂い、こちらに色々な謎を問いかけてくる。

一方その視覚的イメージを裏切るように聞こえてくるのは、「昭和歌謡」。太田裕美の「木綿のハンカチーフ」・・・S50年代だよなぁ~、懐かしい!・・・などの名曲揃い。これもまたこの店の1つの”謎”である。

さて本日は4つの価格帯のコース(いずれもシェフおまかせコース)の2番目(下から)をお願いした。予約時にコースの選択をしなければならないが、内容は”謎”である。客は許容の予算で選択するのみ。そういう意味でここではシェフに全てをお任せするシステムだ。なかなか自信がなければできないことだと思う。もちろん、当方ディナーは初めてなので、期待と不安の半々である。しかしそのこと自体、今回は楽しむ覚悟だ。
       江別創作イタリア料理『リストランテ薫』天然シマアジのスモーク 江別創作イタリア料理『リストランテ薫』アマダイのスープ


最初の一皿はランチの時同様、お通しを超えたボリュームで登場。メニュー名はなく、一皿ごとにシェフが口頭で料理の説明をする。中央は天然シマアジを3日間”熟成”させて、軽くスモークしたもの。添えられた野菜は”低温調理”されているそうだ。この”熟成”と”低温調理”の詳細はわかならいが、シマアジは生に近い状態ながら、余計な水分はすっかり抜けて、プリプリというよりねっとりとした食感。やはり生とは明らかに違う。野菜も甘いでも辛いでもなく、ともかく味が凝縮している。少量のアンチョビソースと岩塩ひとかけらがプラスされているが、各々の素材から不要な要素をマイナスし浮き上がった味わいは、それだけで十分舌を満足させてくれる。

2皿目もお魚で、今回はスープ仕立て。アマダイを10日間”熟成”させ”低温調理”。皮目だけ炭火で炙っている。スープは魚の出汁と昆布だけでとったもの。柚こしょうが添えられ、好みの量をスープに溶かして頂く。大きな器の白い余白がアマダイの控え目な桜色を挽き立てる。器や季節感の演出まで、完全に”和”を感じる一皿。
       江別創作イタリア料理『リストランテ薫』山形牛 ゴルゴンゾーラソース 江別創作イタリア料理『リストランテ薫』ハマグリとホテルイカ、フルーツトマトの手打ちパスタ
さらに3皿目は山形牛のトモ三角をやはり”低温調理”したもの。ソースはゴルゴンゾーラである。トモ三角はモモの中でも霜降りになる希少な部位と言うが、この料理では脂が邪魔することなく肉のエキスをストレートに感じられる。付け合せの大根がいい出汁を吸って・・・と思ったら。こちらも塩を振っただけで”低温調理”したものだそうだ。

ここまで来て、すっかりコースの全体像を見失ってしまった。肉のメインも終わったことだし・・・と心も体もデザートを待つ態勢に切り替わったところへ、パスタが登場。そうか、ここはイタリアンだった!

しかし、これがまた見るからに風変りなパスタだ。国産のハマグリとホタルイカ、フルーツトマトの手打ちパスタ。まず最初に感じるのは紫蘇の香り、スープはハマグリの出汁でこれも完全に和の味わい。さらに見た目もうどんのようなパスタは食感もうどんのようである。フォークに巻きつかないほどピチピチと活きがよく、つるんとした喉越しもあり、それでいてアルデンテのような噛み応えもある・・・今までの経験値にないパスタだ。これがハマグリの出汁と何ともいい相性なのである。お互い引き立て、引き立てられ・・・最初に感じた違和感は、最後にはクセに変わり、今日一番の忘れられない一皿になった。

今度こそ満腹中枢が”デザート(別腹)”モードへの信号を点滅させている。ところが!!!

何やら麗しきホール担当の女性が静々と運んできたのは肉用ナイフ。どんなに硬いデザートなのかと思いきや、まさか・・・のメインの肉料理登場である。
       江別創作イタリア料理『リストランテ薫』合鴨 江別創作イタリア料理『リストランテ薫』デザート
合鴨の”低温調理”。フォアグラとりんご、じゃがいもも各々”低温調理”されているようである。ポルチーニ茸のソースが少しだけ添えられている。堂々とした厚みの合鴨は並々と肉汁をたたえ、キラキラと光を反射させている。

あまりの美しさに、あれこれ写真撮影で手間取っていると、シェフがやってきて、「温度が重要な料理なので、できるだけ早く一口でも食べてほしい」と告げる。ハッとして急いでシャッターを切り、カメラからナイフに持ち替えた。

先程の山形牛同様、脂をまったく感じさせずさらっとした肉汁。鴨独特の野生的な匂いも消えている。しかし旨みはしっかり残っている。シェフの説明によると低温で2時間くらい蒸した後、表面を炭火で炙っているとのこと。肝心の”温度”だが、熱くもなく温くもなく、ちょうど自分の体温と馴染む程。生きている鴨の体温を表現したのでは・・という想像が頭をよぎる。付け合せのりんごは酸味、じゃがいもは甘みが際立っていて、いい脇役ぶり。

今度こそ、今度こそのデザートは、レモンのシャーベット、ホワイトチョコのムース、クリームチーズのアイスのホワイト3本仕立て。シンプルながら、この3種の組み合わせはいずれも引けを取らない個性派で飽きが来ない。

食後の飲み物の要望を聞かれたのでコーヒーを頼んだが、これはコース外。後で会計の時にわかった。ちなみにコース料金(今回は6500円)は税抜である。

終わった!見送りに出てきてくれたシェフに、すかさず”低温調理”の”低温”とは何度なのかと質問。するとシェフは我々を和室に案内し、そこで熱っぽく語り出した。

”低温”は、素材と質量によって変わってくるそうだ。肉ならば、一般的にタンパク質の凝固が始まる58℃位から離水の始まる60℃の間に保つ。シェフの言う”低温調理”というのは、簡単に言ってしまえば、一定の温度で素材を蒸すことのようだが、温度と時間のバランスは、何度も実践してその経験値から割り出すそうだ。

さらに人の嗜好はメイラード反応(焼くことで生まれる風味)を求めるので、表面だけ炭火で炙って仕上げるとの説明。

若き長谷川稔シェフは、札幌や東京で和洋問わず無数の店を渡り歩き、そこで習得した技の数々をもとに、自分なりの料理哲学を持つに至ったようだ。そしてその探求は現在も変わらず進行中で、週1回の休みは、他店の食べ歩きと実験に費やされているとか。そして閉店時間の厨房はラボと化している模様。

魚については、”洗い”が一番重要で、今こそブームになっている”50度洗い”に近い下処理をして、完全に臭みを取る。これは和食の手法のよう。そして何度もペーパーを変えながら数日間脱水・熟成させる。

一方肉は一切熟成させず、出来るだけフレッシュなものを使うそう。これは肉が血を内包したまま仕上げて、ナイフを入れた時に流れ出すのをソースにするためであるとか。なんだか生臭そうに感じるが、肉にも魚同様の洗いを施し、ここで臭みを抜くそうだ。

魚はできるだけ新鮮なもの、肉は熟成させて旨みの出たもの・・・という一般概念とは全く逆のような気がする。これがシェフの言う”独自の料理哲学”というものなのだろうか?

確かにシェフの狙いはしっかり我々に伝わった。新鮮な魚のさしみに醤油が必要なのに対し、熟成した魚はしっかりそのものに味わいがあった。肉もソースに頼らず肉汁のスープで十分な味わいだった。そして魚も肉も特有の臭みは消えていた。

長谷川シェフは伝統的な手法は学びながらも、それを受け売りにせず分解し、組み立てなおすということをやっているように見えた。

もう1つの料理の謎、あのうどんのようなパスタについても尋ねてみた。案の定、「うどんと同じ作り方をしています。」とのこと。粉は道産の「ゆめちから」他数種をブレンド、セモリナ粉もほんの少し入っているそうだ。そして製法は水回しから捏ね方、寝かせ方、足で踏むところまで(!)うどん仕様。そんな作業を夜な夜なやっているそう。

ここまできくと、先程のコースを作り上げるための労働時間はいかほどかと、余計な心配までしてしまう。きっととことんやらないと納得がいかないのだろう。

そんな血気盛んな一面、自分を見つめる姿勢は冷静で、「切り方は和食の職人には敵わないので、最高の火入れと温度管理に努めています。これが洋食のいいところ。」と分析。「技術はないので、情熱だけでやってます。」などと謙虚な発言も。 

食材に関しても、「ミーハーなので、昔は色んなところから取り寄せたりしてたんですけれど、今はなんか違うなって思っていて・・・与えられたものを最高においしく料理するのが使命だと思っています。」と大らかだ。聖子さんの差し入れのセロリラブは「知らなかった!」と興味津々。さっそく低温調理への可能性を探っていた。

コートを着てすっかり店を出る体勢で長々とお話してしまった。帰り際、「僕、3年以内に絶対有名になりますから!」と気後れもせず言った言葉が、なぜか少しも嫌味がなく、自然に応援したくなる爽やかさを帯びていた。

こうして謎から始まった晩餐は、幕を閉じた後もはっきりした結末を見ない、何かモヤモヤとしたミステリーを秘めていた。

しかし、言えるのはこれだ。まずこの店は好き嫌いがはっきり分かれるだろう。主導権を客がすっかり握りたい場合は全く合わない。ミステリー小説を読み解くように、冒険心を持って臨むなら、全く愉快である。

そしてイマドキ珍しい”情熱を持った”若者の、日々格闘、泣き笑いがみえてくるようなドラマティックな料理に、これから先ぐーんと伸び代を感じ、密かにエールを送りたい。

2013.02.28 | | Comments(0) | Trackback(0) | 江別

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札幌市在住でなぜか「江別」好き。友達は殆ど江別、そして農家・・・

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