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森町『みよい農園』のかぼちゃの謎

実はここに来るのが一番の目的だった。森町は駒ヶ岳の麓にあり、水はけのよい火山灰土を利用してカボチャの生産が盛んだ。しかしその中でも一際目を惹く存在、それが『オーガニック農場 株式会社みよい』だ。

実はカボチャはずっと個人的な”課題”だった。以前知り合いのレストランに江別の野菜を紹介したところ、送ったカボチャがどうもシェフの要望に沿わなかった。そこで色々なカボチャを送ってみたが、反応は鈍い。フランス料理ではカボチャと言えばスープが定番で、他にコレという料理方法はないと聞く。案の定シェフの要望は、スープにする時に砂糖を加えなくても十分な甘みと、カボチャらしい香りがあり、鮮やかなオレンジ色をしている・・・というもの。

色々調べたが、ジャガイモの栽培、保存、調理に関する講釈の百花繚乱に比べ、カボチャの情報露出度の少ないこと!そんな折、森町『明井農園』のカボチャのことを目にした。それが林さんの知り合いということも判明。賽は投げられた!ただ向かうのみ。

ともかく多忙で有名な『オーガニック農場 株式会社みよい』社長=明井清治氏が、ちゃんと約束の時間に我々を待ち構えてくれていた。しかもその後こちらがお暇を切り出すまで1時間半もお話を聞かせて下さった!紹介して下さった林さんのお陰。感謝、感謝です。。。

まずは暗くなる前に、駒ヶ岳の裾野35ha一面にカボチャがスルスルと蔓を伸ばしている光景を写真に収めたいと構えていると、すぐにそれを察知して明井さんが切り出した。「畑、今メチャメチャなんだわ。でも、見るかい?」

実は今年6月20日前後の台風4号の打撃をまともに受けてしまったそうだ。トンネルを外した直後だった。「まさか6月に台風が来るとは思わなかったもんな。」既に実をつけていたカボチャは傷だらけ。葉もボロボロになった。カボチャの隙を狙って勢いを得たのは雑草。この日つちと林さんが駒ヶ岳山麓で見たのは一面の雑草畑だった。不用意にも「カボチャ畑はどの辺りですか?」などと聞いてしまった。
『みよい農園』明井さんと林さん
ちょうどこの時期は収穫最盛期だが、今年は雑草の中で傷のついていないカボチャを拾う、宝探しのような状態。収量も例年の35%ほどしかないそうだ。写真を撮るのは諦めようかと思ったが、明井さんが「なんも、撮ればいいしょ。」と自ら被写体になってくれた。一見”強面”と思いきや、本当に気さくな方だ。お隣(右)はもちろん今回の旅の相棒(?)林さん。

さて事務所に移動し、明井さんのお話をじっくり伺ったわけだが・・・最初にお断りしておく。あまりにすごい話、膨大な情報量だったため、つちの理解が追い付かない、頭が整理できない状態であり、聞き間違い、聞き落としがあるかも知れない。いや、あるに違いない。でも貴重な時間を割いてお聞かせ頂いた貴重な話なので、思い出せる限り細部まで記録したいと思う。

そして途中経過も長かったが、この最後のセクションはもっと長い!興味ない方はここでログアウト・・・となるだろうが、このお話、カボチャでなくても、有機栽培でなくても、はたまた家庭菜園でも役に立つ情報満載である。志ある方は何卒ご一読を!


●5年前に止めた45㎝の土起こし

まず最初につちが聞きたかったのは渡島総合振興局の『㈱みよい』を紹介する記事で「畑を今まで以上に深く掘り起し」の記述について。以前プラウ耕起についての疑問を自分なりに考えた経緯があるので、ここは核心と踏んでいた。

すると初っ端から明井さんが自ら切り出した。「俺、ずっと45㎝掘り起こしてたんだわ。それ、今やってないから。」全く、この方はこちらの頭の中を全て見透かしているかのようだ。

その理由。全ての答えは山の土にある。山の土は耕しもしないのにフカフカで、豊かなな実りをもたらす。それはミミズなどの生物や微生物の働きによるもの。微生物が落ち葉や動植物の死骸を分解し、それを植物が栄養素として吸収する。

この微生物には好気性菌と嫌気性菌がある。好気性菌は土壌上部に棲み、嫌気性菌は土壌深くに棲んでいる。45㎝の深掘りはこの棲家をひっくり返すことになる。従って微生物の働きを阻害する行為になる。

「不耕起」は気候のある程度温暖な地域では可能かもしれないが、冬に土壌が凍る北海道では現実的でない。また無除草による作業性についても同じく。要は嫌気性菌を表に出さないよう、除草を兼ねて土表面だけを起すこと。明井さんはパワーハローという機械で秋のうちに整地しているそうだ。

●窒素ゼロに到達!?

続いて明井さんから発せられたのが「今年やっと窒素0になったのさ。」の言葉。「え、なんで?」 と普通誰もが目を剥くだろう。明井さんは次から次へと驚きの提言を投げかけ、聞き手の興味を尽きさせない。そういう話術に長けているのと同時に、人を惹きつける人間的な魅力に満ちているのだ。

つちの小学生レベルの知識でも、植物の3大養分は窒素、リン酸、カリであり、窒素は葉をつくり、リン酸は実をつくり、カリは根を作るため欠かせないというのはおぼろげに把握している。窒素がなければそもそも植物が成長できないのではないか?

「うち去年ピュアホワイト作ってたのさ。あれ生食用でしょ? 硝酸態窒素(窒素は硝酸態窒素として植物に吸収される)そのまま食べることになるしょ。体に良くないし、あれはえぐみとか苦味とか、味悪くするからね。」 

●アブラムシが寄ってこない?

で、窒素0にしてカボチャはどうなったのか、先を急ぎたい我々に、明井さんはまた謎かけをした。「とうきびってよくアブラムシつくしょ?あれ、害虫じゃなくて益虫なのさ。」

「???」答えは人体に良くないとされる硝酸態窒素を吸ってくれるから。一方窒素を0に近づけた明井さんのピュアホワイトにはアブラムシは一切つかなかったそうだ。彼らは硝酸態窒素があると寄ってくるそう。知らなかった!

●葉や蔓が育たないのに収量は同じ?

で、窒素断ちしたカボチャがどうなったかだ。「窒素なかったら育たないって思うよな。いや、大きくならなかったんだわ。例年13m伸びてた蔓が3mにしかならなくて、葉の大きさも1/3くらい。」

なんだ・・・やっぱり。ところが、「収量には全く問題なしよ。」

まず、窒素は空気中にも75%含まれている。カボチャなどの蔓性植物は空気中から窒素を吸収し体内に固定させる能力に長けている。でもそれだけじゃぁないだろう。そしてやはりそれだけじゃなかった。

●微生物農法で糖度が6度上がった!?

「微生物農法やってるのさ。」と、また明井さんはチラッといたずらっぽくこちらの反応を確認してから話を続ける。

明井さんは畑に微生物を撒いているそうだ。これは4年前から。同時に窒素も減らしてきた。「そうしたら収量は減らない上に、糖度が一気に6度も上がったのさ。」なんと最高糖度は24度まで行ったそうだ。バナナの一般的な糖度が16~20度くらいというから、これは化け物だ。

●海の栄養を戻す

微生物効果で糖度が6度上がったというのには、当の明井さんもタマゲタようだ。明井さんはそれ以前から独自の有機肥料を作って土づくりに力を入れてきた。

森は漁業の町である。この土地も昔は海だった。原始の森林が豊かなのはその時の海の栄養分が持ち出されず残っているからなのではないか。そんなことを考えている時にある日大量に廃棄されたホタテの貝殻を発見。「俺、それ見た時宝の山に見えたのさ。」

「よくホタテの貝殻撒いてるって勘違いされるんだけど、貝殻撒いてるわけでないから。」と明井さんが釘をさす。「㈱みよい」のパンフレットによると、「ホタテ貝を養殖する際に貝の表面に付着する、海藻類やフジツボ等の貝類や甲殻類等を主体として作られた堆肥」を畜糞堆肥と混ぜて再度発酵させて、畑に撒いているそうだ。

それでやっと糖度が1度上がった。「糖度1度上げるって、ものすごく大変なことなんだ。」それが微生物散布で6度上がったのだから、再度驚きだ。

さらに明井さんの海の環境を取り戻す追及は留まらない。海洋深層水も撒いている。最初は塩分を抜いたものを使用していたというが、「今は”生”撒いてるんだ。塩分濃度4度だけど、いや、もともとここは海の中で今でも自然の土には2%位塩分含まれてるんだから・・・全然問題ない。」

●エサと微生物を混同するなかれ

さて、もう1つ約5年前に大きく方向転換したことがあったそうだ。前述の海産物堆肥だが、安く手に入ることもあって明井さんは「バンバン使ってたのさ。」と言う。「俺さ、堆肥の栄養分がそのままカボチャに吸収されると思ってたわけ。でも、微生物使い始めてわかったのさ、堆肥は微生物のエサなんだよね。

なんとかつては10aに10tの堆肥を入れていたそうだ。堆肥=エサの食べ残しは腐敗し土壌の汚染につながる。現在は2回に分けて1tずつが適量と判断しているそうだ。

●35年間の連作と生緑肥の否定

もう1つ驚異のデータがある。明井さんが20歳で就農して(最初から有機栽培)以来今日までの35年間(ってことは・・・「そう、俺、55歳なんだ。」)、1度も連作障害なしでカボチャを作り続けているということ。

それを実証しているにもかかわらず、明井さんには歯がゆいことがある。「森町の農業指導はさぁ、いまだに1度収穫したら5年は畑休ませろっていうんだ。」明井さんによると連作障害というのは化学肥料を使う場合に起きる現象だという。

さらに明井さんが語気を強める。「休ませた畑に緑肥植えて、それを直接鋤き込めって指導してるんだ。」明井さんによると、緑肥は生だから、そこに含まれる窒素が土に戻ることになる(明井さんの出発点は窒素0土壌)。そして生の葉を入れるということは腐敗を進め、病原菌を繁殖させる行為になるという。

明井さんはと言えば、マルチを外す際に邪魔な雑草をチョッパーで粉砕して乾燥させる。乾燥させることで水分と一緒に窒素が飛び、また発酵菌が繁殖しやすい状態になる。中でも放線菌類が様々な病原菌を殺し重要な働きをする。これらの多くは好気性菌なので、明井さんの土地の火山灰土では深さ10㎝の範囲内に鋤き込むそうだ。

●EM菌の使い方(余談)

「ちょっといい?」と林さんが我慢しきれないと言わんばかりに、乗り出して質問する。「EM菌ってどうなの?うちの家庭菜園でもつかってるんだけど。」

明井さんの話では、日本ではEM菌の活用はあまり成功例がないという。EM菌の多くは嫌気性菌上から散布しても葉の上で死んでしまうので効かない。北海道では新篠津でEMぼかしを空気が入らない密閉状態でつくる製造機を導入、有機メロンを栽培している。

「使い方間違えなければ有効だと思うよ。俺は使ってないけど。」とのこと。

●微生物を撒くタイミングは月の満ち欠けで

「もう1ついい?」と林さんが矢継ぎ早に質問する。「さっきヨアンのところ行って来たんだ。そうしたら月の満ち欠けで農作業を決めるって話出たんだけど、あんたも前そんなこと言ってたよね?」

お、忘れてた!さっき林さんから、明井さんに会ったらそのこと聞いてみてと言われていたのだった。明井さんは何の気もなくちらっと壁のカレンダーに目をやって、「うん、やってるよ。」とあっさり答える。しかしまた急にあのいたずらっ子のような目がキラリと光り、「ここからは企業秘密!」と言う。

重要なのは微生物を撒くタイミングだそうだ。これは月に2回チャンスがある。ちなみに満月は子孫を残すタイミングなのだそうだ。さっきヨアンは満月に種を蒔いたと言っていた。明井さんが微生物を撒くタイミングがいつかは敢えて聞かなかったが、バイオダイナミック農法を実践している人ならわかるのだろう。

明井さんは決してバイオダイナミック農法実践者ではないが、この月2回のタイミングだけは雨が降ろうが何があろうが絶対外さないそう。

●小さなソーラーパネルの役割

ところでどうやら微生物を撒くのは、カボチャの細胞分裂が活発になるタイミングらしい。先程の窒素をゼロにした結果、葉が小さくなってしまったという話の続き。小さな葉は光合成するにも不利に思える。

「小さな葉の中に無数のソーラーパネルがある状態よ。」と明井さんが最後の謎かけ?植物の細胞分裂が始まるその時を狙って微生物を放つ。それによって栄養素が効率的に吸収され細胞分裂を促進する。その結果小さくても細胞数の多い体を作れるということらしい。

●45度の高温キュアリング

収穫し土からはなれた後も一手間かける。手塩にかけたカボチャの本当の美味しさを届けるためには、最後の最後まで手を抜かない。収穫したばかりのカボチャはデンプン質で糖分は少ない。デンプンを糖分に変えるには温度差が必要だ。おいしい野菜は昼夜の気温差が大きいところで出来るという、あれだ。ところが収穫期の8月はせいぜい昼夜の差は5度くらいしかない。そこで人工的に温度差を作っているのだ。

「温度下げるのは大変だから、上の温度を上げたのさ。」と、カボチャが傷まないギリギリの温度=45度まで2時間上げておいて、一気に外気を通す。これを最低5日間繰り返すそうだ。

●経験を伝える

ふと、ここまで来た明井さんはこれから何処へ行くのだろうかという思いがよぎった。「俺、本当は森を有機の町にしたいと思ったのさ。」役場にも働きかけた。明井さんという人は、お分かりになると思うが、ド素人の我々にもこれだけ懇切丁寧に情報提供してくれる人だ。自分の経験や知識は全て包み隠さずオープンにするだろう。

しかし、それが場合によって違った見方をされてしまうこともあるようだ。一部から反発が出、色々考えただろうが「有機の町=森」構想は断念したという。

一方で林さんと一緒に所属する「中小企業同友会函館支部」に農業者のグループ「AP(アグリポット)北海道」という組織を立ち上げ、明井さんを中心に皆で勉強しているそうだ。その中から明井さんに続く人材は現れるのだろうか?

「やっぱりみんな、おっかねぇからさぁ。いや、俺だって最初おっかなかったんだから、わかるんだ。」

明井さんという人は、表面的には常識を覆すラジカリストに見えるが、実は驚くべき自己批判力と客観力を持っているからこそ、過去の成功体験に安住せず殻破りをするように思う。そういう人には他人の気持ちがわかる。今日はいい話ばかりを聞いたが、恐らく相当苦労もしているだろう。

まだまだ次から次へと興味深い話が飛び出しそうだったが、こちらも帰宅時間があるし、忙しい明井さんにも申し訳ない。”この続きは是非また別の機会に!”と心から伝えお別れしたのだ。

そして今年は貴重なカボチャ、もしや在庫がないのかと諦めかけたのだが、有難いことに1箱分けて頂くことができた。それに糖度が22~23度あるというスーパーカボチャをお土産に付けてくれた!
       『みよい農園』かぼちゃ1 『みよい農園』かぼちゃ2
各々写真手前がそのスーパーカボチャ。試食の結果、スーパーカボチャはそのまま”餡”のよう。これはもうお菓子である。スーパーじゃなくても十分甘く、色も美しい。これなら”シェフ”も納得したかな~

以上、思い出す限りを記したが、是非農業者の方は直接行って、明井さんに色々な疑問を投げかけてみて欲しい。必ず何らかの回答を出してくれるだろうし、一緒に考えてもくれるだろう。

ところでここまで本当に読んでくれた方、もしいたなら是非コメントください。私もここまで書いて熱が出ました。

おつかれさまです・・・

2012.09.18 | | Comments(2) | Trackback(0) | 出張報告!

コメント

読んでよかった

最初はちょっと身構える気持ちで読み始めたのですが…

つちさんの書かれているとおり、明井さんの巧みな話術に乗せられた(!?)かのように、いつのまにかどんどん内容にひきこまれていきました。

深掘りの土起こしをやめた?窒素ゼロ?微生物を撒く?海洋深層水?
驚きの発言、謎めいたキーワードが次々と現れて、その秘密を知りたいがために読み進む…。
本にたとえるなら、上質なミステリのページをめくる手が止まらない…といった感じでしょうか。

聞き手の気持ちをひきつける、明井さんのお話のうまさとお人柄の魅力はもちろんのこと、
それを明快な文章でまとめたつちさんの熱意と能力もお見事です。
長いレポお疲れ様でした!

どのお話もとても興味深く、なるほど…と何度もうなずきたくなりました。
「海の環境を取り戻すため」の、飽くなき努力と挑戦…。
これからもさまざまなご苦労があることと存じますが、大きな成果と豊かな実りに恵まれますこと、心よりお祈りしております。

そして、プロの農業従事者の皆様から、畑仕事に関心のあるアマチュアの皆様まで、ひとりでも多くのかたが今回の記事を読んで、何かを感じて下さるといいなあ…!

2012-09-21 金 10:51:25 | URL | さざぴ #d819E29w [ 編集]

さざぴさま

おおっ!読んでくださいましたか!

明井さんの話に惹きこまれていた私の疑似体験をしてもらえたら本望です。

全くの素人を虜にできるんだから、やっぱり明井さんは魔術師?

またお話を聞く機会を狙っています!

2012-09-21 金 16:11:07 | URL | つちばく #- [ 編集]

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Author:つちばく
札幌市在住でなぜか「江別」好き。友達は殆ど江別、そして農家・・・

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