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「手の仕事」-『燻製工房ハントヴェルク』

なかなか報告内容が現実の時刻に着いていかない。今回は2月28日(土) 江別のお隣、南幌訪問の報告。

お隣とは言え、南幌を訪れたのは2008年の6月以来。不思議な(?)北大院生、柚洞一央氏の養蜂生活を窺いに行ってから縁がない。

道程もうろ覚えだったので地図を片手にたっぷり時間に余裕を見て出かけたものの、自動操縦のようにいつも向かう豊幌の手前を道なりに右へ折れると、あれよと言う間に着いてしまった。

向かった先は江別『米村牧場 チーズ工房プラッツ』「ホエーミルク豚」の加工を委託している『燻製工房ハントヴェルク』。「ホエーミルク豚2008」製品発売時にコンタクトを取って以来1年越しの訪問である。

1年も熟成してきたわけであり、実は肉加工品について、米村牧場の「ホエーミルク豚」について、そして代表の坂本健氏ご自身について、聞きたいことがドッサリあって話の入り口を何処にしようかなどと悩んでいたのだが、結局は事務所の椅子にコートを着たまま座るなり、坂本さんの話に終始惹きこまれて終わってしまった。

そもそもはつちが製作をお手伝いしている『米村牧場 チーズ工房プラッツ』のHPの中で『燻製工房ハントヴェルク』を紹介する一文を載せる目的での訪問だったのだが、あまりに内容が濃く深く、とてもそれ位に収まりそうにない。そちらの方は方法を考えるとして、まずは坂本さんからお聞きした話の一部始終とはいかないが、つちの記憶に残る限りをここに記録しよう。


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まず「ハントヴェルク」という名の持つ意味について―

『燻製工房ハントヴェルク』坂本健代表取締役子供の頃から加工品に興味があって、必ずパッケージの裏の内容表示を見てました。同じお菓子でも味が違うのは何でかなって。片方に入っている原材料がもう片方には入ってないのを見て、そういうことかって納得したりして。

大学でも食品加工を学んで、できればタレメーカーに就職したいなと思っていたんですが、縁あって肉加工品の会社に入ったんです。

入社して初めて3年半くらいかけた商品開発プロジェクトチームに入れてもらったんです。それが”くず肉”をつなぎ合わせて” ステーキ”にする・・・って言うものだったんです。大プロジェクトだし、入社して初めて自分が関わって製品化したものだし、完成したら親に送ってやろうって思ってたんです。それが、結局送れなかった。

理由はこんなもの食べさせられないって思ったから。独立したのも”親や子供に食べさせたいものを作りたい”っていう思いが原点ですね。

「ハントヴェルク」って言うのはドイツ語で”手の仕事”の意味なんです。

大量生産と手作りの違いは・・・例えば”ひき肉を作る”という工程ひとつでも、うちは枝肉1本1本を僕と4人のパートさんで毛など異物が入ってないかをチェックして、余分な脂肪は削ぎ落として手で掃除してるんです。こんなこと大手でやっているところはないですから、変な話何万本に1本の豚の毛が入っててもおかしくない。

それで別にお腹を壊すってこともないだろうし、大したことじゃないって言うのがメーカーの感覚なんです。でもね、メーカーにしてみれば何万本に1本かも知れないけど、それを買ったお客様には1本分の1本なんです。要するに工場生産になると、単なる工場製品を作っているだけで、”食べ物を作っている”って感覚がなくなって来るんです。

僕はたまたま前職で肉加工に携わっているから、独立して同じ分野の仕事をしていますけれど、”手の仕事”に入るなら何でもやってみたい。それはお菓子でもいいし、チーズでもいいし、行く行くは『工房ハントヴェルク』の名で色んな”手の仕事”の製品を扱いたいですね。

肉加工においてこだわっている点や方向性は―

方向性は、僕は1つに絞らなくていいと思ってます。格好良く言えば”人に感動を与えること”なら何でもやって行きたい。それは味の追求でもいいし、安全性であってもいいし、資源の活用でもいい。

『燻製工房ハントヴェルク』のブランドで作る製品については冷凍肉は一切使わないんです。どんなブランド肉でも冷凍したら何にもならない。でも加工委託を受ける場合は相手方の要望をできるだけ聞きたい。引き受ける部位もこちらの都合で”ロースだけ”なんて言いません。

でもね、よく養豚農家さんと議論するんですけれど、「うちの豚肉本来の味をそのまま出してくれ。」って言われても加工する以上はそれは無理ですよって返事してます。ウィンナー食べて「これはどこそこの肉を使ってる」なんてブラインドでわかるって言うのは難しいですよ。僕にできるのはその肉のいいところを尖がらせて製品を作ることくらいです。

『燻製工房ハントヴェルク』肉の熟成過程を丁寧に図解してくれる坂本氏例えば脂が甘くて美味しい豚はできるだけ早く加工してしまう。肉って普通は熟成させた方が旨みが増すんですけれど、そんなことしないでともかく脂が酸化しないうちに製品にします。

保水性が抜群の豚肉は、結着性がいいですから練る回数を通常の1/3位にして、できるだけ旨みを外に逃さないようにしてやるとかね。

豚肉については色んな生産者さんのものを食べていますけれど、本当に飼い方で全然違う。ホエー豚だからとか放牧だからというだけでは一概にどうって言えないですね。

”ホエーを飲んでいるからチーズの香りがする”なんて言うのはあり得ないですけれど・・・(笑)、同じようにホエー飲ませて、同じような餌をやっているんだけど、片方は抜群の保水性があるのに、もう片方はそうでもなかったりするんですよ。

放牧豚は健康的なイメージだけれど、それが味に結びつくかというとちょっとわからないですね。今生ハムを熟成中なんですが、放牧豚はそうでない豚に比べて熟成が遅いような気がするんです。

これは僕の勝手な想像ですけれど、よく運動している豚は生存中にタンパク質を分解する酵素を使い果たしている可能性があるんじゃないかって・・・これは想像の域を超えていませんけれど。

味の追求ですけれど、僕は自分の舌がずば抜けて優れているとも思わないし、万人に好まれる味を作るっていうのは無理だと思っています。僕は普通の味覚を持った1人の人間として自分が美味しいと思うものを作るしかない。

でも最もシンプルなビアウィンナーっていう製品に関して言えば、今までにもう10数回レシピ(配合)を変えています。それはやっぱり目指すレベルがどんどん上がっているって言うことなのかも知れません。


そして「ハントヴェルク」を象徴する坂本さんの”手”を見せてもらった。
手袋をしての作業とは言え、冷たい肉を練る作業でその手は痛々しかった。
それでも”手の仕事”を続けるモチベーションはどこから来ているのだろう―


『燻製工房ハントヴェルク』坂本健氏の”手”やっぱり肉は冷たいんですよ。でもね、手で練ってるでしょ。その時声には出さないんですけれど、心の中で「頼むぞ、おいしくなってくれよ。」って自然と念じてるんです。特にテンションが上がるようないい肉を扱う時には、塩を入れる手が何度も止まるんですよ。肉の重さに対して何%って言うレシピはあるけど、小数点何位で%を計算するかで微妙に違ってくるでしょ。そうするとまた肉に触れて状態を確認しては悩むんです。

よくパン屋さんなんかで酵母の働きをよくするために工房でモーツァルトを流しているとかって言う話聞くじゃないですか。初めはそういうの全く信じてなかったの。でもね、最近それもあり得るなと思い始めたんです。音楽って結局電波と同じ波動じゃないですか、それが微生物に作用してもおかしくないなって。

これは御伽噺でも何でもなくて、手の仕事には目に見えない色々なものが働いて、同じレシピでも人によって出来上がりが違うんです。そこがおもしろいところです。


最後に生ハムの熟成庫を見せてもらった。江別『米村牧場 チーズ工房プラッツ』の「ホエーミルク豚2008」の足も数本ここで2年目の春を迎えようとしている。―

『燻製工房ハントヴェルク』イタリア式生ハム熟成中『燻製工房ハントヴェルク』スペイン式生ハム熟成中僕も生ハムは初めて手がけるのでイタリア式(ラードで覆っている)とスペイン式(ラードで覆わない)の2つのやり方を試しています。

最近は乳酸菌を肉に人為的に付着させる製法が多くなってきているようですけれど、もともとその土地に住みついている菌の作用で自然に熟成させるのが生ハムの製法なんです。結局ここではイタリアやスペインと同じ味は作れない。やっぱり南幌は南幌のやり方を見つけるしかないんですよね。

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1年越しでやっと時間を絞り出してもらえたわけだが、坂本さんは何と2時間半もの間、素人のつち相手に誠心誠意付き合って下さった。

とことん追求する職人肌、一方で実生活者としての目線を忘れない人情味あふれる側面、バランスの取れた深い味わいを坂本さんに感じた。もしかしたらそれはそのまま『燻製工房ハントヴェルク』の味なのかも知れない。

100%だと思っていた味に次の段階があることに気がつくこと、今までの固定概念にふと疑問を感じること、そんな経験談を聞きながら、”手の仕事”というのは、モノに触れることで人間の想いを伝えるのではなくて、モノから手を伝わって何かに気付かされるというところに醍醐味があるのではないかと思った。

こんな風に想像してみたらどうだろう?これは御伽噺だが、生ハムの熟成庫の扉を開けた瞬間、数万個、いや数百万個(?)の乳酸菌が一斉にこちらを見ている。それが心も体も健やかで、いい香りのする仲間の乳酸菌をいっぱい身に纏ったいつものあの人だったら、彼らは安心して伸び伸び仕事するだろう。そして色んな信号をこちらに送ってくれるに違いない。

坂本健さんは”手の仕事”を通して何かと対話することを楽しんでいるように見えた。

生ハムの熟成庫にはチーズのような芳香が漂っていた。生ハム達はすこぶる機嫌よさそうだった。完成が楽しみだ!

2010.03.09 | | Comments(0) | Trackback(0) | 江別

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Author:つちばく
札幌市在住でなぜか「江別」好き。友達は殆ど江別、そして農家・・・

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