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ヴェルコール地方自然公園とは

ヴァン・ド・サヴォワの里シャペレイヨンを後にし、50kmほど更に南下、我々一行は総面積約20万haのヴェルコール地方自然公園に入った。

・・・と言ってもゲートがあるわけではなく、いつのまにか入っていた。公園内であれ、普通の街の営みがあり、その証拠にこんなマルシェにも出くわした。

「地方自然公園」とは何なのか・・・その説明は後にしてまずはマルシェの面々をご紹介。
       ヴェルコール・マルシェ1 ヴェルコール・マルシェ2
何だか知らないがカメラを向ける我々一行に怒鳴り散らしていたマルシェのおじさん。後で聞いたら「写真撮るなら買わないとダメだぞ!」と怒声を上げていたらしい。

まず目を惹いたのはこのフランボワーズ。おじさんの言葉はわからなかったがこちらはちゃんと購入した。
       ヴェルコール・マルシェ3 ヴェルコール・マルシェ4
こちらのカボチャはこんな感じ。ニンニクはピンク色だ。エンダイブに、フダンソウ。
       ヴェルコール・マルシェ5 ヴェルコール・マルシェ6
普通のブロッコリーはなくて、このロマネスコが幅をきかせている。サボイキャベツのちりめん模様も細かい。
       ヴェルコール・マルシェ7 ヴェルコール・マルシェ8
こちらのジャガイモはこの手のが多いそう。日本では小芋サイズだ。
ともかく計り売りなのでさっきのおじさんの前に並ばないといけない。あっと言う間に列ができる。マルシェはやはり人気だ。街にパッと花が咲いたみたいに活き活きとしている!

さてお買い物に興じた後は、ヴェルコールでの最大のミッション、地方自然公園事務所を訪問。
その日本にはない形態と役割の中身を探るのだが、ここからが長い!
ともかく結論だけ知りたい場合は一気に飛ばして最終行へどうぞ
                ヴェルコール地方自然公園・ベック氏


「地方自然公園」とは何?

フランスで主に自然保護を目的とする指定公園は国立公園、今回訪れた地方自然公園、自然保護地区があるそうだ。そのうち国立公園はスキー場などの乱開発を防ぐための自然保護目的が強いのに対し、地方自然公園の目的は”自然保護”+”地域振興”という2本立てとなっている。

・・・といわれてもピンとこないが、案内してくださったベック氏の「アメリカは人のいない場所を自然公園に指定しているが、我々は人の住んでいるところを指定する。」との解説からイメージすると、理想的な農村形態をそっくりそのまま生きたミュージアムのようにして保護する試みのようだ。

その成立の経緯はやはり1960年代のパリ一極集中、農村無人化の脅威から、自然+農村文化遺産を守るためだったそうだ。

フランス全土で45箇所、合わせて国土全体の13%にもなる広大な面積を占め、3,716の市町村とほぼ全州(24州中21)にまで及んでいる。

そのうち6つがローヌ=アルプ州にあるらしい。そのうちの1つであるヴェルコール地方自然公園は1970年と早い時期に成立している。イゼール県とドローム県にまたがり、85市町村の4万5,000人の人口を抱える20万6,210haもの広大な土地(東京都よりちょっと小さい?)だ。

この中には大企業は一切ない。域内、つまり自然公園内の保護された(?)住民の主な産業は紛れもなく農業だ。

この公園の運営形態は日本から見ると非常に特殊で、活動資金は、ローヌ=アルプ州が60%、イゼールとドロームの2県が各々15%ずつ、残りが11の市町村組合と85の市町村、公園外周辺4都市(グルノーブル、ローマン、クレスト、サン・マルセラン)から出資されるが、どこの自治体にも属さず独立した組織だ。

そしてこの組織の運営プログラムは12年毎に更新される「憲章」に基づいて実施される。この「憲章」は域内全ての経済関係者が話し合いの上定め、国の許可を受けたものだそうだ。

その憲章の具体的な項目を見ると、6つの柱が掲げられている。すなわち①自然・文化・景観保全②国土整備③地域経済支援④一般公衆受入・情報伝達(観光と広告・宣伝の意味と思われる)⑤データ蓄積・調査⑥持続可能な国土の成立・・・・とこれは公園とは言え、ほとんど1つの自治体だ!

このように複数(しかも85も)の市町村が共通の目標を持って関わっているケースは世界的にもレアだと言う。1992年にリオ・デ・ジャネイロで行われた「地球サミット」においては世界各国代表と肩を並べ、独自の「ローカルアジェンダ21」という持続可能な行動計画を提出しているそうだ。

憲章項目の実施内容は非常に細かい。例えば「環境保全」については、野生動物の再生や、地下水保護のための排水処理の共同管理、放牧による牛の糞尿の川流出防止策など。「農村文化遺産保護」については、集落の形態保全のための修繕費用助成、遺産目録の作成、景観を壊す風力発電の禁止、山の維持と林業従事者の雇用創出のための間伐事業と、その暖房への活用、エネルギー節約方法の策定(バイオマス、太陽光発電も技術的に進んでいるとか)などなど。

しかしヴェルコール地方自然公園の最大の活動目的は、やはり「農業振興」だと言える。

ベック氏が強調していたのは「”農+観光”は常に組み合わせで切り離せない。この2つが一体でメインの経済活動です。」ということだ。またこのことは農業者と都市住民の交流が農業の保護・振興に欠かせないという意味でもある。

このようなスタンスで公園が果たすべき役割は「外から見た農業の付加価値を高めること」だと言い切っていた。

その1つは「環境保全と農業の両立」。ヴェルコール地方自然公園は、自然保護と経済活動の調和を目的とした、ヨーロッパ自然地区ネットワーク「ナチューラ2000」という組織にも所属しているそうだ。具体例としては、動植物との共存のため採草時期を鳥類の生息時期とずらしたり、殺虫剤不使用の推進(これらについては実施農家に面積あたりの補助金が出るそうだ。)、また”花咲く平原”というテーマで、花の種が落ちてから採草することを推奨したりしているそうだ。ベック氏の説明では、開花後に遅く刈り込んだ牧草は、乳質を高めるという科学的データもあると言う。我々一行の顔には”?”の文字が浮かんでいたが、ベック氏は自信たっぷりだった。

もう1つは「農産物への高価値付与」だ。その手法は一貫して”効率追求・規模拡大と逆方向を目指すこと”と明確だ。そのため公園では”自ら加工して自ら販売”を推奨している。これには労力が要るが、組合に原料を卸すより確実に経済的メリットが大きいそうだ。

フランスでは主にパリ盆地や西海岸で2,000ha以上の大規模農家がミルクを全土に原料供給しているが、山岳地帯では不可能。その不利な立地を生かして、せいぜい40~45haで20~30頭の牛で原料生産より高収入の方法を選ばないと生きていけない。これがこの土地での農業の運命であり、それがすなわち”価値”である。

この”品質型農業(ベック氏曰く)”は、生産物の価値だけでなく、観光資源としての重要な価値を生み出しているそうだ。公園内で作られた農産物はほとんど域内で消費されているという。つまり都市部からわざわざここへやってきて買っていく人が多いということだ。消費者はそれが実際に作られている環境を見て、安心、納得して買うことを好んでいるようだ。

公園はこのような農家の経済活動を支援するために、常時8人の農作業補助員を職員として確保しており、人手の必要な時に人材派遣している他、通販ネットワークでのプロモーション推進、域内産物である証として公園のマークを使用することを認めている。現在700軒の専業農家のうち60軒がマークを使用しており、消費者のモチベーション喚起にも役立っていると言う。

ベック氏曰く、700軒の農家も公園の方針とほぼベクトルを合わせているそうだ。小規模の自立型農業経営のため、GAECルブローションのフェルミエもそうだった)という複数農家での共同経営システム、これは搾乳、加工など作業によって役割分担をするしくみのようだが、そういった手法を取り入れたり、消費者との交流、観光、そして商品のプロモーションのために”フェルマット(?)”という、納屋で行う音楽祭なども開催しているそう。「納屋パーティー」? 楽しそう!

このような公園と農家の二人三脚によって、すでに強力なブランドイメージが築きあげられている。
ベック氏は狂牛病が露出した際、フランス国内で牛肉の消費が5割減ったにもかかわらず、公園内では逆に出荷が増えたという話をしてくれた。

今グルノーブルなど周辺都市から公園内への移住要請が多く、悩みの種になっているとか。農村維持のための一定の住民は必要だが、あまり多くの住宅が建つと景観のバランスが崩れるからだ。嬉しい悲鳴・・・とも言えるだろうか。いずれにしても公園外のこうした周辺都市部からの収入または人材で、この農村は生きた文化遺産として維持されており、そのことを都市住民も承諾している。なぜなら公園のイメージアップが自分達の都市のイメージアップにつながるからだ。

この都市との連携は政策においても上手く機能しており、公園の憲章更新と同時に都市計画も更新されるそうだ。両者は相互依存の発展を歩んでいる。

このようにいいことずくめに見えるヴェルコール地方自然公園だが、不安要素もある。これからの問題として、2013年から国の農業への直接保障がなくなることや、温暖化により雪が減少した時の冬の魅力づくり、都市との依存関係を維持するための移動手段となるインフラ整備など。。。

しかし自治体とは別に、このような独自の価値観で農村を生かしていく活動があるということを知り、まさに目からウロコであった!

さてつちの結論であるが、やっぱり人間も農村も「見られることで美しくなる!」ということだろうか!

この地方自然公園は囲ってしまったり、出入りを制限したりではなく、”どんどん来て、見て!”というスタンスだ。そして公園を美しく保っているのは、中で普通の生活を営む人たち。彼らは常に見られているという意識で、自発的に景観維持に努めている。いや、それは無意識に生活の中の美意識として根付いていると言ったほうがよさそうだ。一種のプライドとも。

結果、その景観の中で人間が堂々と経済活動をやって、自然に活力を与えている。ヴェルコール地方自然公園は、人間が美しい自然の一部になれるかどうかの一大実験場のように思える。そしてその答えはやはり「YES・・・じゃなくてOUⅠ(?)」のような気がする。もしここにさっき見たマルシェや牛や花飾りのある家々がなかったら、この景色は単なる物質に過ぎない。物質を人の心を動かす美しい景観にするのは人間なんだから、堂々と見られて美しく生きなきゃ・・・。ヴェルコールの例を見て、何だかすごく勇気づけられた!

2008.11.17 | | Comments(2) | Trackback(0) | 出張報告!

コメント

とても勉強になりました。
丁寧なご報告に情報発信の大切さを感じます。ありがとうございます。

私達の農場にも有難い事に沢山の視察のお客様がお見えになります。時に対応が大変な位です。けれど、多忙で動けない農業の場に情報を持った方々があちらからいらしゃる。その事を最大限に自分の中に取り込めば、農場にフィードバックできる部分はとても大きいと思います。

お客様にとっても刺激、そして農業者にとっても刺激。都市と農村の接触って本当に大切ですね。
農産物の付加価値付与については、私も今、じつは動き始めた所で、農家が直接販売に及んだ場合、農産物だけでは補えない部分があり、やはり最終的には加工まで行う事の大切さを感じています。それがまた国の加工食品の安全性におけるレベルアップにも繋がるのではないかとも思います。

それにしても、フランスが農業への直接支援を止めるという話は初めて伺いました。
色々勉強の余地がありそうですね。
一度、つちさんにもお話伺いたいです。

2008-11-18 火 13:29:09 | URL | ちか #sWmqaT5A [ 編集]

ちか様

お久しぶりです!
長ったらしいレポートに目を通していただき恐縮です!

今回印象的だったのは、農家が外に人との接触を通して、自分達の農村の価値に気付き、守っていこうと自発的に動いているということでした。

やはりちかさんのように、常に外の目で自分を見るチャンスを意図的に作るって大切だと思います。忙しいのは皆一緒だから辛いと思いますけど、でもそれをやった人とやらない人では、結果的な心の充実感も違う。フランスの農家の誇り高さを見ていてもそれがすごく伝わってきました。

ちかさんの活動にすごく期待してます!

2008-11-18 火 20:16:09 | URL | つち #- [ 編集]

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Author:つちばく
札幌市在住でなぜか「江別」好き。友達は殆ど江別、そして農家・・・

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