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ボフォール・チーズが教えてくれたこと

さて再びフランス、ローヌ・アルプ地方の視察報告です。

”グリュイエールの王子様”=ボフォール・チーズの故郷をわざわざ訪ねたのは、ただ食べに行ったわけでも、チーズの製造方法を学びに行ったのでもない!このチーズがどうこの土地と結びついているのかを体得するためだった。

そんなわけで、ボフォール最終日は村の農業担当助役農業委員会の会長との面談に臨んだ。
       ボフォール農業担当助役と農業委員会会長 ボフォール高地放牧地1
ビッグハンドの持ち主であるお二人は、正真正銘の農業者でもある。後で、長年手で乳を搾ってきたという助役さんに握手を求めると、その手は固く、農業者としての威厳に圧倒された。


ここでボフォールの農業について概要をお聞きした。
現在”農業者”は約2,000人の住民中、120人程で微増かつ安定しているという。

この”農業者”の定義は、まず収入の50%を農業から得ており、農業者としての資格試験に合格している従事者とのこと。この資格の取得には、農業高校の修了とその後4~5年間のボフォール以外の地域での研修が条件になっている。これは跡継ぎも同条件。国の補助金はこの”農業者”になることで得られる。

一般的な農業者の収入内訳は、ミルクの販売・加工・加工品販売という農業収入が半分。逆に半分は農業外収入=”観光”だと言う。つまり、貸し別荘のジッド、レストラン兼宿泊施設のオーベルジュ、母屋に宿泊させるシャンブル・ドートや、村民自らが設備投資、運営しているスキー場のリフト券販売や宿泊提供などから得られる収入で、ほぼ全ての農家が何らかの観光に携わっているという。宿泊可能数で5,000ベッドあるそうだ。

この観光収入は農業収入と密接にリンクしていて、ボフォール・チーズがあるために観光者があり、また観光により、ボフォール・チーズの宣伝・拡販につながっているという。

一方で農業収入の柱はボフォール・チーズの製造・販売だ。なにしろAOC外チーズの5割、フランスのチーズ全体平均の2割も価格が上だというボフォール・チーズは、ほぼ全ての農家が製造していると思われる。

規模は各農家で幅があり、牛の数も10頭前後から100頭以上まで。100頭もあればかなりの実力者のよう。経営形態も個人、法人など様々だ。

ちなみに助役さんの場合を例に挙げると、法人経営だが、冬の舎飼いの時期は60頭で家族のみ。夏の放牧期には、50km圏内の他の小規模農家の牛を借りて120頭、従業員も3人雇っているそうだ。

そして夏は全て高地放牧地(ちなみに個人所有地のよう)に建てたチーズ小屋(あのエピセアで建てているそう)でチーズを作り、冬は前述の協同組合に販売してチーズにするそうだ。チーズの売り先は8割がAOCの加盟問屋、2割は専門店とのこと。

国や地域からの補助金は全体収入の2~3割程度。また高地については税金が安いなどの支援もある。

ボフォールの農業形態をおおまかに把握した後、夏に放牧が行われるという標高2,500mの高地放牧地を実際に訪れた。バスを下車した地点が1,968m。ここから徒歩で上がる。大理石のような白い美しい石が転がっている坂道を不思議と楽に登っていった。

西部劇に出てきそうな全く人の手が加えられていない大地。真ん中を縫う川面がキラキラ輝いて光がはじけている。ところどころにまだ少数の牛の姿と、夏のチーズ小屋と思われる建物も見える。夏になれば
この広大な土地に牛たちが点々と見えるんだろうな~。足元にはまだエーデルワイスをはじめとする高山植物の花々も残っていた。

「花の香りがする」というアルパージュは、この景色が生み出す。ここには草地を育てる堆肥も必要ないそうだ。人工的なものは何もない。ただ牛たちが自分の舌でこの環境を整える。

そういえばボフォール・チーズの原材料は牛の生乳と牛から取ったレンネットだけだ。乳酸菌なども加えない。その固有の風味の元は全てこの環境そのものなのだ。ここから1歩出れば同じものは人間には作り出せない。
       ボフォール高地放牧地3tr ボフォール高地放牧地2
今は全てのバランスがとれているこの大地も、農業人口の都市への流出、大量生産型チーズの登場などの危機にさらされた1960年代には大きな決断を迫られたわけだ。
その時に村の人たちが選んだのが、 ”伝統”と”自然環境”と”牛”を信じるという道であったことを、本当に感謝したい。

帰国後に知ったのだが、ボフォール・チーズのAOC規定には、1頭あたり平均搾乳量5,000kgという制限もあるそうだ。その理由というのが、牛を長生きさせるとか、ミルクの品質を保つなどといったことかと思ったら、全く意外なものだった。

つまり1頭あたりの搾乳量=効率が上がると牛の頭数が減る。すると必要な草地面積も減る。荒地が増える。農業者も減る。美しい景観が崩れる。観光産業も衰退する。。。。どうだろう、最後にはボフォール・チーズの裾野がどんどん狭まって、味もイメージも壊れていくのではないだろうか。

全てはこの地に暮らす人たちの、農業生産効率の悪い山間地だからこそ、ここでしか出来ない非効率かつ高価値な生産物をつくりだそうという忍耐強い選択と、人間のすべきことはこの環境のバランスの中に静かに身を置くことだという謙虚な思想による賜物だと思う。

人工的な音のしない高地で、牛の首につけられた大きな鈴の音が時折風に運ばれてくる。大きい鈴をつけている牛ほど健康で立派な体を持っているという。鈴の音の高らかな牛群は農家の誇りだ。威厳ある山地に囲まれて威厳ある農業をしているボフォールの人たちがとても格好いい。人も美しい景観の一部になりうるということを実感できた滞在だった。

2008.11.12 | | Comments(0) | Trackback(0) | 出張報告!

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札幌市在住でなぜか「江別」好き。友達は殆ど江別、そして農家・・・

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