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サヴォワAOCチーズのフェルミエ訪問

最初のミッションを終えて宿泊先のアヌシーへ帰ろうとする我々に、ムジェーブが送ってくれた最高のプレゼントは・・・
               モンブラン

「モンブラン・・・・・  」

ムジェーブの人たちがこの景観を必死で守ろうとする気持ちが素直にわかる瞬間だった。

この光景に未練を残しながらバスでアヌシーへと向かう。起伏に富んだ景色は車窓から見ていて飽きない。

「あ、牛・・・」
       車窓からの牛 車窓からの牛2
気がつくと開けた草地にはどこもかしこも牛が転がっている(・・・という表現が相応しいくらい!)。
白い仮面を被ったようなおかしな風貌のこの牛はアボンダンス。この地で一番多く見られる牛種だ。

我々を導いてくれるバスドライバーのEricのアイディアで、途中チーズ工房に立ち寄ることができた。「GAEC”La Vallee Blanche”」という名のフェルミエ(農家のチーズ工房)だ。
      フェルミエ牛舎1 フェルミエ


”GAEC”とは共同経営農業集団のことのようで、写真の方はClavelさんかRichardさんか、どっちかわからなくなってしまったのだが、こちらのオーナーだ。

搾乳牛70頭でチーズを作っている。「アボンダンス」(牛種の名前と同じ)と「ルブローション」という2種は「AOC」(原産地呼称認定)を取得している。

AOC取得には細かな条件が定められていて、チーズ製法だけでなく、搾乳牛は顔の白いアボンダンスか全身茶色のタリーヌという地方品種であること、”生”の全乳で作られること、サイレージの禁止、粗飼料などの限定・指定などなどの厳しいハードルがある。当然投資も必要になるが、AOC取得によって販売価格帯は認定外品の倍になることもある。

10月の後半ということで牛たちは皆牛舎に入っていたが、5月から10月始めにかけては放牧され、自然草地で主に7~8種類の草を食べているそうだ。年間搾乳量は約6,000ℓ/頭とのこと。

伺った時間は調度午後の搾乳中で、搾られた牛乳がホースを伝わってそのまま牛舎横にある加工所のチーズバットへ流れ込んでいた。搾ったら即加工というのもAOCの規定だ。
       フェルミエ工房 フェルミエ工房2
加工所に並んでいたのはルブローション。型に入れ8時間置いた後2時間塩水に漬け、その後90%の湿度で毎日上下を返しながら1週間置くそうだ。その後表面に浮いた脂肪分を拭き取り3週間カーブで熟成させるとのこと。4.5ℓの牛乳から1個(450gほど)のルブローションが作られる。

オーナーは自信たっぷりに語り尽くすと、手際よく1個のルブローションを出してザクザク切り出した。最初の一切れを真っ先に自分の口に運んだ後、頷きながら我々に食べるよう促す。
       フェルミエ・ルブロ-ション1 フェルミエ・ルブロ-ション2
パンのように黄金色の美しい表皮からクリーム色の内部がトロリとはみ出している。見ただけでこれは美味しいと直感的に感じた。果たして大き目の一切れを頂いた後、もっと食べろと目で合図するオーナーに喜んで応え、更に大きな一切れを・・・皆同様のリアクションで、あっと言う間に1個のルブローションが我々一行の胃袋に収まった。

さらにはセミハードタイプのアボンダンスも試食させてもらうと、ほぼ全員が納得してまとめ買い。仕舞には「チーズが嫌い」と言ってた人までが何故か購入していた。

ルブローションは柔らかく(日本ではウォッシュタイプとされるらしい)、アボンダンスは柔らかめのセミハードで、味も全く違う個性を持っているのだが、どちらも共通して”受け入れやすさ””クセ”が同居している。旨味が一直線でなくどこまでも奥深い。ついついこの味は何だろうと次から次へと手が伸びてしまう。

その個性には牛乳を一切殺菌しないという製法も大きく寄与しているだろう。フランスでは”菌を殺す、減らす”のではなくて、”菌をコントロールする”という考え方があるようだ。こちらのフェルミエのオーナーも、重要なのは”清潔にしすぎないこと”だと言っていた。味の芸術性はこうした多様な個性が絡み合った複雑味から生まれるのだろう。

それにしても何と言う贅沢だろう。チーズの本場フランスで農家直販のチーズを買えるなんて。。。
しかもその有り難味は帰国後に倍増した。某札幌百貨店で100gほどの小片になったルブローションを見かけた時だ。やわらかいルブローションは”切り身”にされると見事に潰れ、中身が半分流出した情けない姿だった。あの黄金色の表皮も見当たらない。その上価格が100g=1,200円以上。日本に居る限り、恐らく一生口にすることはなかっただろう。ちなみに農家直販は450gのまるまる1個でそれくらいの値段だった。

そして何よりも現地でチーズの源になる環境や牛を見ながら、農家の説明に納得して買ったことで、日本で食べる時の楽しみが違う。お土産に渡す時には受け売りの物語を得意げに話し、自分で食べる時には現地の光景を脳裏に浮かべる。

まさに今年8月の清里町で行われた”ガーデンアイランド”のフォーラムで、前パリ・ソルボンヌ大学総長=ジャン・ロベール・ピット氏が表現していた「味の風景」(つまり、味の記憶とそれを味わった場所の景観の記憶、この2つが一体となって自分の中に残ると、ふたたび時を越え、場所を隔てても、それを味わった時にその光景が目に浮かぶ。その時、その生産物とその場所は単なる物質ではなく、その人にとっての精神的価値を有するという。)の実体験だ。
    フェルミエ・家屋 タルティフレットtr
購入したチーズの包み紙にも印刷されている伝統様式の立派な農家家屋と、自信に満ちた”La Vallee Blanche”オーナーの姿に、彼らのこの地での農業への誇りを感じ取りながら帰途についた。

そしてアヌシーに戻って夕食に登場したのが(右)、「タルティフレット」という郷土料理。茹でたジャガイモにルブローションをたっぷり載せてオーブンで焼いたシンプルなもの(炒め玉ねぎやベーコンを加えることもある)。しかしホンモノのルブローションが乗っかったホンモノの味だ。

地元の人たちの生活にしっかり組み込まれたこの地の農産物=チーズの、その堂々たる文化としての価値に畏敬の念を抱かされた。

引き続き、徐々につづく・・・

2008.11.01 | | Comments(0) | Trackback(0) | 出張報告!

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Author:つちばく
札幌市在住でなぜか「江別」好き。友達は殆ど江別、そして農家・・・

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